文化祭まであと一日

1/9
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ

文化祭まであと一日

――――――文化祭が直前に差し迫ってきたため、ずっと稽古で使用していた視聴覚室は天文学部に追い出され、代わりに俺達には体育館の舞台の使用許可が下りた。  正面の幕は降ろしたままで、本番前の通し稽古をしろということだ。  さすがに視聴覚室と体育館の舞台では迫ってくる空気感が違う。ちょっと緊張しながら舞台袖にいた俺の耳に、猿渡と森田がしゃべっている声が聞こえてきた。 「徹也の奴、とうとう吹っ切れたのかな? すげえ積極的に見える」 「というか、やけになってるだけじゃねえのか?」 「にしては随分と楽しそうだ」  今日の徹也は、本番のドレスを彷彿とさせる薄布で作った巻きスカートをはいている。汚れると嫌だからと言って本番用のドレスの代わりにと、手芸部が用意してくれたものだ。こういうところだけは必要以上に世話を焼いてくれるんだよなあ、女子って。  だけど、その単なる巻きスカートだけでもあるのとないのとでは違うらしく、徹也の仕草もいつもより滑らかで、可憐にすら見えた。ああいうのを見ると、やっぱり視覚効果って大事なんだと思い知らされる。     
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!