5人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
文化祭まであと一日
――――――文化祭が直前に差し迫ってきたため、ずっと稽古で使用していた視聴覚室は天文学部に追い出され、代わりに俺達には体育館の舞台の使用許可が下りた。
正面の幕は降ろしたままで、本番前の通し稽古をしろということだ。
さすがに視聴覚室と体育館の舞台では迫ってくる空気感が違う。ちょっと緊張しながら舞台袖にいた俺の耳に、猿渡と森田がしゃべっている声が聞こえてきた。
「徹也の奴、とうとう吹っ切れたのかな? すげえ積極的に見える」
「というか、やけになってるだけじゃねえのか?」
「にしては随分と楽しそうだ」
今日の徹也は、本番のドレスを彷彿とさせる薄布で作った巻きスカートをはいている。汚れると嫌だからと言って本番用のドレスの代わりにと、手芸部が用意してくれたものだ。こういうところだけは必要以上に世話を焼いてくれるんだよなあ、女子って。
だけど、その単なる巻きスカートだけでもあるのとないのとでは違うらしく、徹也の仕草もいつもより滑らかで、可憐にすら見えた。ああいうのを見ると、やっぱり視覚効果って大事なんだと思い知らされる。
最初のコメントを投稿しよう!