3人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
私、ラハザル・グラジュヌールは、先月ここの養子になった。身寄りのない私を、グラジュヌール夫妻が引き取ってくれた。
きっかけはよくわからない。ある日目覚めたら、怪我をして病院のベッドにいた。医者の話によると、事故に遭ったらしい。幸い命は無事だったが、それまでの記憶を全部忘れた。
警察はいろいろ調べてくれたが、事故った当初の私は手ぶら。身分証明書もなく、DNA検査をしても、身元がさっぱりわからない。私は自分の名前もわからず、不安なまま入院していた。退院したらどうすればいい? 現実から目をそらそうと、がむしゃらにリハビリに励んでいた。
が、退院当日。不安は全部消え去った。病院の出口に、グラジュヌール夫妻が来ていた。
「私はマリア・グラジュヌール。これからよろしくね」
「僕はジョセフ・グラジュヌールだ。今日から家族だよ」
今の母上と父上である。
二人とも白髪で、やさしい顔はしわしわだった。父上は杖をついていた。どこの誰がどう見ても、おばあ様とおじい様。逆に私は19歳。(血液検査で年齢がわかった)年が離れすぎてて、親子って感じはしなかった。孫になった気分だった。養子縁組してるから、母上父上って言ってるけれど。
最初のコメントを投稿しよう!