カ・ン・セ・ツ

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「大島はさ、小林あたりと良く呑みに行ったりするの?」 「いいえ。プライベートでは全然。飯田さんこそ会社の人と呑みに行ったりするんですか?」 「ははは。俺もあんまり無ぇかなあ」  くしゃりと笑ってビールを呷る。普段は少し怖く見える一重が優しい弓の形を描いていた。ちょっと貴重。 (おじさんなんだけど……)  飯田さんは若く見えるとはいえもう四十歳で私は二十六。私の知らない三十代を既に生きてきた人だ。仕事での絡みは殆ど無く、私の歓迎会のときにたまたま席が隣になってから話すようになった。そのときは共通の話題もなく自然と年齢の話になったんだけど、私の年齢を伝えた途端「お前、まだ子供じゃねえか! 髪も背もちんちくりんだし」と目を丸めた顔をいまだにはっきりと覚えている。今考えると結構失礼。  それが理由って訳じゃないけど、あれから少し髪を伸ばした。  飯田さんはひょろりと背が高くてちょっと猫背。こめかみにすこしグレイの混じる黒髪。頬骨の張ったシワの目立つ頬に切れ長の目は一重で、はっきり言って第一印象は怖いおじさんだ。実際、客先の電話にはすぐにキレるし、冗談とか言わないし。  でも、そんな人間臭い人だから。
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