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対岸貿易の拠点
ここに中古車販売店が進出してきた。国内で売れない車を処分しようと貿易に目を向けたのだ。通関手続きや確定申告書の作成などを踏まえての進出である。領収書に印紙を貼らなければならない金額だから素人感覚では無理だ。国内で実地を踏んだ業者が、空き地を借りて看板を掲げて対岸貿易を始めた。
業者は、回りを柵で囲んでプレハブ小屋と中古車を置いた。その店に碧眼金髪の男たちが客として寄り付き始めた。夜になると、部品を盗みに来る者が出始めた。業者は警察に通報して、店の立ち入り調査が行われるようになった。
それを見ていた地元住民は怪訝な感情を持つようになった。自分達の安全が脅かされると考えた住民は、町内会長を使って店に苦情を申し立てた。事務所にいるのは結婚前の女の子だから、赤の他人から何を言われても返す言葉がない。「社長にそう伝えときます!」と追い返すのが精一杯である。
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