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「それよりも、相談があるんでしょう?」
なに? とサクちゃんが首を傾げる。それすらもなんだか色っぽくて、神様って超不公平だと思う。
「あのね」
手元のサーモカップを指ではじきながら、
「ヒロ君のこと、どう思う?」
「櫻井君のこと?」
サクちゃんの言葉に一つ頷いた。
櫻井洋之。同じく法科大学院既修二年生、二十六歳。
「まあ、頭いいなーって思うけど」
サクちゃんをして頭いいなんて言わせるなんて、やっぱりすごいんだなー。そうじゃなくて。
「違くて!」
思ったより大きな声がでて慌てて声を潜める。午後三時、ラウンジにはそんなに人はいないけれども、あんまり話を聞かれたくない。
「かっこ良くない?」
「あ、そういう話ね」
言ってサクちゃんは微笑んだ。
「そうね、背も高いしね」
「でしょ? それにね!」
ヒロ君はなんだか可愛いのだ。
例えば、すれ違い様、あたしは軽く片手を上げる。彼は、片手を勢い良く振ってくれる。
同じクラスの子で食べた余ったお菓子をあげたら、次の日には机の上に「ありがとう、うまかったです」のメモ。おそらく熊だと思われるもののイラスト付き。
毎日の手作りのお弁当。世界的に有名な鼠のお弁当箱、同じく黄色い熊の箸箱。
自習室内では、みんなスリッパとかクロックスに履き替えているけれども、そこでチョイスされた昔ながらの上履き。
なんていうか、もう可愛すぎるだろう、二十六歳の男!
「ローに来るまで、四つも年上の人と話す機会とかあんまりなかったし、もっとこう大人なのかと思ってたんだけど。思っていたよりもちょっと抜けてて、可愛い!」
年上なのに、見た目は超かっこ良くて背も高いのに、あんなに可愛いなんて反則!
黙って話を聞いていたサクちゃんは、
「あー、なんかわかるかも」
いって小さく頷いた。
「でしょー」
きゃーきゃー盛り上がる。サクちゃんには彼氏がいるからライバルにはなり得ない。だからこんなに盛り上がれるのだ。
「杏子ちゃん、うるさくねー?」
現れたのは、同じクラスの前田治君。二十六歳で、彼は未修。
学校によって同じクラスになるかは異なるらしいけど、うちの学校では既修二年生と未修二年生は同じ二十人程度のクラスで演習の授業を受ける。治君達未修は、あたしたち既修よりも一年はやく入学している。既修七期生と未修六期生が一緒に授業をうけるのだ。
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