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あたしの将来の夢は小さいころから、お嫁さん、なのだ。
それすらも遠い。
子供の頃はお嫁さん、なんて普通に生きていればなれるものだと思っていた。
小学生のころ思い描いていた二十二歳のあたしはもっと大人で。銀座とか丸ノ内とかのオフィスでOLやっていて。デートの約束があるのにはげ面の上司に残業命じられて、泣く泣く約束キャンセルしたら、カレシに怒られたりして。実家じゃなくて、一人暮らしで。そういう、少し古いドラマみたいなものを思い描いていたのに。
二十二歳なんてちっとも大人じゃなかった。
旦那どころか、カレシも出来ないし。
いつもよりも重い、腕の中の、蛙色の判例六法。
荷物を腕に抱えたまま、学生証を出してドアをあけようとすると、
「おつかれ」
中からヒロ君があけてくれた。
「あ、ありがとう」
「いいえ」
彼は笑うと、自分が出て行くわけでもなく立ち去る。わざわざあけてくれたなんて、優しい!
まあ、みんな開け合って持ちつ持たれつな気もするけれども、やっぱりヒロ君は優しい。
確かに就職しておけばよかったって思うけれども、そしたらヒロ君にも合えなかった訳で。
やっぱり、ロー来てよかった!
少しだけ足取りを軽くして、自分の机へともどった。
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