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それからひと月
高梨さんのご主人は、お店に一度だけ顔を出し、それっきり来る事はなかった。
僕は、それはそれでショックを受けた。
高梨さんのショックは、僕の何倍だったんだろう。
佐竹さんはあれっきり、出勤する事はなく、お店を辞めた。
吉川くんは、佐竹さんがいなくなって安心したのか、あのままアルバイトを続けている。
僕は冬休みが終わり、遅番のみのシフトに変え、アルバイトを続けながら学校へ行っている。
高梨さん……舞子は、ご主人とは離婚が決まり、そのまま僕の部屋に住んでいる。仕事もあの雑貨屋さんで働いている。
僕は彼女の柔らかな笑顔と声と、全てを愛しているが、彼女の許しはまだ出ていない。
もし、僕のことが嫌いなら、彼女はここにはいないだろう。だから僕は、彼女が心と体を開いてくれるのをじっと待つ。
僕がもう少し大人になって彼女に追いついたら、その時は来るのだろうか。彼女は僕に、全てを許してくれるのだろうか。
それともあの鳩のように、どこかへ飛んで行ってしまうのだろうか。
おわり
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