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大学が冬休みに入り、僕は予定通りアルバイトを始めた。駅前ビルにある雑貨屋だ。ここにはもう二週間前に採用が決まっていた。 男友達には「あそこの雑貨屋で?」と不思議がられたが、女友達は「えぇ~!いいなぁ。あのお店可愛い物ばかりだよね」と羨ましがられた。 僕はこういう可愛い雑貨が大好きだ。 初日の朝、あらかじめ知らされていた通り、スタッフ専用の入り口からビルに入り、そして休憩室へと入った。 そこは、オープン前でバタバタする他の多くのテナントのスタッフ達でごった返していた。 そんな中、僕は少し不安を感じながら、部屋の隅に椅子一つ移動させ、そこにちょこんと座って待った。 数分して、僕の知ってる顔が現れた。昨夜、人事の人に呼ばれてお店に来た際に紹介された、高梨さんだ。僕とあまり年齢は変わらない風に見えるけど、実年齢は不明。 高梨さんは、声や話し方が柔らかくて、他人(ひと)の心を丸くするような女性だと、ほんの数分しか会話はしてないけれど、たぶん僕は、あの時すでにこの女性(ひと)に恋をしていたのだろう。
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