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「ここ、出ましょう。さ、立って」と僕は佐竹さんを促した。
佐竹さんは、難なく自分の足で立ち上がって、酔っているのが演技だと、僕にはわかった。
腹の中がグジグジいい出す。
僕はお勘定をして、佐竹さんを抱き抱えるように居酒屋を出た。
駅は右側。左に行けば、ホテルがある。下品な光を放つホテルだ。
「佐竹さん、電車乗れますか?」僕は一応聞いた。
「え~無理ぃ~鈴木くんの家に行くぅ~」
僕は佐竹さんをその場に放り投げて帰りたい衝動に駆られた。
そしてわざとらしく「そこにホテルならありますけど」と言ってみた。
佐竹さんはすぐに「ホテル?鈴木くんとなら行ってもいいかも~」と、はい、これが目的だったんだなと、僕は思った。
「え?僕とホテル……ですか?」
「鈴木くん……私の事、嫌い?」
「いや、嫌いではないですけど……」
「それなら、私に恥かかせないで。お願い」佐竹さんは僕にすがるような目をして見つめてきた。
僕は、「どうなっても知りませんよ」と、ぶっきらぼうに吐いて、左方面へと足を向けた。
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