柔らかな人

ー 3 ー

「ふ……。そうですね、高梨さんのご主人と関係してますよね、佐竹さん？」
「あ、あの……何故それを？」
「高梨さんはとっくに知っていますよ、あなたとご主人の裏切りを」
「でも、あれはあの人の方から……」
「そんな事は関係ありません。佐竹さんは、断ろうと思えば断れたはずです。なんといっても、あなた達は高校の同級生だ」
「……」佐竹さんは、僕の下で無言を貫いている。
「あなたには、高梨さんの苦しみがわかりますか？」
「私が、私が先だったのよ！浩司さんを好きになったのはっ！」
「でも、その浩司さんは、舞子さんを選んだ。でしょ？」
「く……っ」佐竹さんは悔しいのか、その濡れた赤い唇を噛んだ。そして、その目からは涙がこぼれた。彼女のマスカラとアイラインが、黒い線になって落ちた。

僕は、佐竹さんの体から離れ「佐竹さん、今のあなたの顔を、鏡で見てきてください。あなたのしてきた事の醜さがよーくわかりますよ」

そう言って、僕は一人でホテルの部屋を出た。