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翌日の早番は、僕と高梨さんだった。
高梨さんはどこか元気がなかった。それでも、お客さんに対しては懸命に、いつものあの柔らかな笑顔と声で接していた。僕にはそれが痛々しくて、今すぐにでも、彼女の背中を包んであげたい気持ちだった。
遅番だった佐竹さんは、仕事を休んだ。おそらく僕がここにいる以上、このお店には来ないだろうと、僕は思った。
その穴を埋めるため、急遽吉川くんが遅番で出勤した。
僕は、高梨さんに先にお昼に行ってくださいと言った。彼女は、「ありがとう。じゃ」とお店を出て行った。
今日は、地下のスーパーは安売りでもなんでもなく、このお店もそんなに混雑はしないだろう。僕一人で十分にさばけそうだ。
一時間もしないうちに、高梨さんは戻ってきた。
「あれ?高梨さん、早かったですね」僕は努めて明るく話しかけた。
「うん。ありがとう。鈴木くんお昼行って」と、柔らかな声で高梨さんは僕に言った。
「今日、帰りに少しお話できますか?」僕は高梨さんの耳元に囁いた。
彼女はかすかに頷いた。
「じゃ、お昼行って来ます!」僕は元気にお店を出た。
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