柔らかな人

ー 4 ー

カフェの一番奥の目立たない席に、高梨さんは座っていた。
遠くから見ても、彼女は柔らかな空気を漂わせている。

僕が席につくと、彼女は僕を見上げて微笑んだ。

「お待たせしました」
「話ってなに？」高梨さんが少し緊張した声で聞く。
「いえ、大した話ではありません」と僕は微笑んだつもりだ。

「佐竹さんから何か連絡ありましたか？」
「何もないわよ。鈴木くん、彼女に何かしたの？」
「してないですよ。されたのは僕の方ですから」そう言って、僕は肩をすぼめた。