ー 4 ー

10/10
前へ
/69ページ
次へ
それからひと月 高梨さんのご主人は、お店に一度だけ顔を出し、それっきり来る事はなかった。 僕は、それはそれでショックを受けた。 高梨さんのショックは、僕の何倍だったんだろう。 佐竹さんはあれっきり、出勤する事はなく、お店を辞めた。 吉川くんは、佐竹さんがいなくなって安心したのか、あのままアルバイトを続けている。 僕は冬休みが終わり、遅番のみのシフトに変え、アルバイトを続けながら学校へ行っている。 高梨さん……舞子は、ご主人とは離婚が決まり、そのまま僕の部屋に住んでいる。仕事もあの雑貨屋さんで働いている。 僕は彼女の柔らかな笑顔と声と、全てを愛しているが、彼女の許しはまだ出ていない。 もし、僕のことが嫌いなら、彼女はここにはいないだろう。だから僕は、彼女が心と体を開いてくれるのをじっと待つ。 僕がもう少し大人になって彼女に追いついたら、その時は来るのだろうか。彼女は僕に、全てを許してくれるのだろうか。 それともあの鳩のように、どこかへ飛んで行ってしまうのだろうか。 おわり
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加