悪魔な君の暖かさ

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「まぁ、人工知能入りのこたつを娘の部屋に置くっていうのも、ちょっと斜め上の考えだよね」 「毎年こたつでぐだってる娘には、最適のプレゼントだと想ったのよ」 「……よく見てらっしゃいます」 「親子だからね」 「――昔は、よく一緒に入ってたもんね」 「ええ。お父さんを含めて、みんなで年を越したわね」  それは、父が正月の飾りを準備して。  母も、それにあわせて蕎麦や餅を用意して。  私は、二人を見ながら、新年への期待にどきどきしていた。  そんな、懐かしい、淡い正月の記憶。 (その頃のこたつは、まだコータじゃなくて、みんなで入れるものだったけれど)  ――父が亡くなるまでの、一家団欒の、風景。 「反省も、してるのよ。部屋にこもるようになったあなたに、なにも、できなかった」  母はそこで、いったん言葉を句切った。 「あなたを、コータに、まかせてしまった。……ごめんなさい」 「それは、違うよ」  母は一人で、私をここまで育ててくれた。  話す、ということが大切なことを、母は昔から語っていた。  だから、コータを与えてくれたのは……私のことを、ずっと、考えてくれていたからだと想う。
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