悪魔な君の暖かさ

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『香織様に適した温度を読むのは得意です』 「おつとめご苦労様です」  最新センサーを搭載するコータの熱は、確かに読みが上手い。うますぎる。  私の体温にぴったりするような、温度調整と内部分布のシステム。  これを造りだした人は、本当に悪魔なんじゃないかって想う。 「抜けられぬ」 『排除機能はありません』 「あったら困る」 『こたつへの依存は、血流と身体機能へのリスクが考えられます。適度な運動をお勧めいたします』 「マッサージ機能と……ええと、座りながら運動する方法ない?」 『こたつより出て、全身を動かせる領域を教えていただければ、検索データの提示は可能です』 「そうじゃないんだよぅ~。だらだらしつつ、身体も動かしたいんだよぅ~」  ついでに痩せたい、と、わがままを言ってみると。 『矛盾、検索エラー。香織様の思考に異常が認められます』 「ぬぬぅ、人間としての素直な欲求なのになぁ」  ――コータはすごい。  たとえこのまま横になって寝てしまっても、上半身が寒く凍えることもない。  こたつ内部に収納された予備カバーが延長され、体温調整を整えてくれるからだ。  もしもの時は、救急車を呼ぶことだってできる。  寝過ぎや体調なども逐一チェックする、人工知能家電。  それが、こたつのコータ、なのである。 『ところで香織様』 「なに、コータ」 『女性向けの、一月一日の予定候補を検索いたしました』  ――私は口元をつり上げて、コータの言葉に苦笑する。 「ほう。また余計なことを」  テレビの特番を見ながら、惰眠とカロリーをむさぼる。  それが、一月一日の過ごし方じゃないのか。  なのに、暗に暇人と言われているわけだ。  こたつに。  否定しないけど。
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