悪魔な君の暖かさ

4/14
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
『不要であれば、提示いたしませんが』 「いいよ、聞かせてみて」  主人を飽きさせないよう、彼らは話題を提供する。  黙れと言えば黙るし、しゃべれと言えばしゃべる。  とっても有能で、すなおな、かわいい存在。  正月のだらけた時間をすごすには、誰にも迷惑をかけないし、とてもいい相手だ。  ……まぁ最近は、正月以外もかまってもらっているけれど。 『では、候補第一』  さて、どんな答えが出てくるか。 『恋人との初詣』 「いたらこんなことしてないわ!」  絶叫する私に、検索し直しの起動音を出すコータ。 『除外項目としますか?』  ……そんなふうにマジメに返すところも、まぁ、らしくはあるのだけれど。 「いいよ。ただ、優先順位は低下ね」 『承認しました』 「……まぁ。恋人いたら、コータとすごす時間、減っちゃうかもね」 『寂しくなりますね』  言葉と違い、抑揚のない声。  あくまでコータは、こたつに備え付けられた、人工知能の返答にすぎない。 (情感たっぷりにされても、困るけどね)  その淡泊さが、一人の相手にはちょうどいい。  そんなことを想いながら、元日の時間は過ぎていく。 (……こんな日にも、用事があるって、出かけるんだもんね)  ほとんどの人が休む、そんな正月の日も――働いている人は、いる。  家にいない人のことを想いながら、ため息を吐く。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!