悪魔な君の暖かさ

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 ※※※ 「よしっ、悪魔の復活準備完了!」  埃を払って掃除をし、同梱されていた布団もセット。  安定のミカン籠、そして観賞用のタブレットもぬかりなく。  当時の堕落用具一式をそろえ、いつでも、あの当時に戻れる環境を構築する。 (……いや。戻ったら、まずいんだけどね)  とはいえ、コンセントにプラグを入れて、起動準備が済んだ青ランプがつくと、ちょっとした興奮を感じちゃう。  久しぶりの友人に話しかける、高揚感。  それに似た気分で、私は口を開いた。 「ただいま、コータ!」  ――でも、その言葉に、返答はなかった。 「……あれ、おかしいな」  聞き取りが悪かったのかな?  もう一度センサーに向かって呼びかけるけれど、変化なし。  違和感を感じて、コータの説明書――アナログな紙が、まだ残っていた――を引っ張りだし、各部を確認する。  手や足を入れてみると、熱の自動調整や、人感センサーは効いているみたいだった。  声がけとともに、古いテレビや部屋の照明もついた。無線接続機能も、大丈夫みたいだ。 (なら、応えてくれないのは、なんで?)  その他の機能も、壊れてるわけじゃないと想う。  なのに……一つだけ、変わってしまったものがある。 「コータ?」  ――無機質で、穏やかな、あの声が。  ――私の呼びかけに、応えてくれない。
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