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私はバッグを探し、あの時から変えていない、古いスマートフォンを取り出す。
電話とスケジュール管理しかしていない端末には、あの当時のアプリが、たくさん残っていた。コータの設定をするためのアプリも、ちゃんと。
急いでタップして、アプリを起動。
コータとの接続をしようと……する、の、だけれど。
「……今月の通信料、ちゃんと払ったよね?」
そんな、現実逃避めいた一言を言いながら、眼の前の表示がのみこめない。
『接続できません』、と表示された、エラーの意味が。
(お母さんなら、なにか知ってるかも)
急いで母を探し、コータの事情を説明する。
「……あっ」
すると、思い当たることがあったのか。
ちょっと前に来た電子メールを、タブレットから見せてくれた。
そのメールのタイトルは、"K-J-23Type:サービス停止のお知らせ"。
「……大元が、やめちゃったのか」
メールには、コータに関わるネットワークサービスと学習機能の全てが、停止されると記されていた。
コータ自身の故障ではないと知り、ほっとしつつも。
(じゃあ、私とコータは……もう、話すことは、できないのか)
全サービスの機能停止という意味を理解し、息をのむ。
コータの受け答えや学習反応は、企業側が持つシステムに、依存していた気がする。
つまり、今のコータは……まさしく、こたつとして造られた、その機能だけがある存在ということになる。
(……私はこたつです、になっちゃいましたか)
ぼんやりと、メールの文面を眼で追う。
"新型への移行や、年々増していくメンテナンスの困難さ。それらを鑑み、サービスを停止させていただくこととなりました"
……企業は、公的事業じゃない。
コータも、人権や命があるわけじゃない。
そんな当たり前のことだけれど、なぜか、ひどく気持ちが落ち込んだ。
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