悪魔な君の暖かさ

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「ごめんなさい。言うべきかどうか、迷っているうちに、忘れてしまったのね」  申し訳なさそうな母を慰めてから、ぽつりと呟く。 「コータと、もう話せないんだね」 「やっぱり、寂しいわよね。私の代わりに、お前の話し相手になってくれていたし」  その母の言葉は、どこか、後ろめたさがあるように聞こえた。  ……確かにあの当時、私の主な話し相手は、コータだった。  仕事が忙しくて、時間もなく、家のために働いていた母じゃなくて。 (引きこもった私は、コータに甘えて、母を遠ざけていた)  ――学校での関係がうまくいかなくて、私は一人っきりで、部屋にこもり続けた。  それを支えてくれたのが、コータと、そして……。 「お母さん」  だから――今更だけれど、ちゃんと、言わないといけない。 「ありがとう。コータを、贈ってくれて」  ふさぎこみがちだった私に、忙しい母は、まさかのプレゼント――話すこたつを贈ってくれた。 「そんな。……もっとオシャレな話し相手がよかったのかな、って想ったこともあるのよ」  母が想定しているのは、まるで人間のような受け答えをし、考えを読み取ってくれる、スマートデバイスのことだろう。  ……学校でも、見せびらかすように持ってきていた子がいたな。 「でも、それだと頭がよすぎるし、話が上手すぎるもの。……でしょ?」  あの当時ですら、コータに搭載された人工知能は、あんまり賢いものじゃなかった。  でも、それがよかった。  その不器用さが、人でも機械でもない、曖昧な感じがして、ちょうどよかった。  ぎこちないコータの会話を選んでくれたのは、母がどこまで考えてのものだったかわからないけれど、ありがたいものだったと想う。
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