並行世界の東野くんと魔性の暖房器具《こたつ》

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並行世界の東野くんと魔性の暖房器具《こたつ》

「あ、ちょうどいいところに来たな東野くん!これからこたつ組み立てるんだけどさ、東野くんも手伝ってくれない?」 「……こたつ?」 リビングに入ってきた、私の同居人であり平行世界調査官の東野くんは、こてんと首を傾げた。 一人暮らしをしている私には、東野くんという同居人がいる。 東野くんは並行世界調査官だ。 東野くん曰く並行世界調査官とは、数ある並行世界を渡り歩き、その世界の文化や経済、気候などを記録する列記とした職業だそう。東野くんの世界ではメジャーな職業のようだ。 一つの並行世界には、平均で一ヶ月から半年滞在するらしく、ホテル暮らしだったり民家に泊めてもらったりすることがほとんどだ、と聞いた。民家なんかに住まわせてもらえるのか、と思う人もいるかもしれない。だが、多額とは言えないが少なくない謝礼金につられてしまう人も多いと思う(実際私がそうだった)。 並行世界って何?という私の質問には、時間軸がどうだの、なんちゃらの多世界解釈だのと、難しい返答しかされなかった。頭のいい東野くんとは違い、私は頭が悪いので理解しようとするのをやめた。要約すると、この世界とよく似た別の世界のことらしい。 そんなよく似た別世界からやって来た東野くんは、何故だか私の家に住んでいる。
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