真っ赤なバラと真っ赤な痛み

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「こんなのは序の口だろう?さぁ答えろ、テメェはなぜこの土地に執着する?俺のシマは他の組の何倍もの面積があるが、テメェは俺のシマというよりこの“場所”を欲しがっている」  アタシに聞きたいことってそんなこと?でも驚いたわね。アタシがDBのシマじゃなくてこの“場所”が欲しいの、見抜いていたなんて。  アタシが男だっていうのも気づいたし、この男、侮れないわ。まぁ、最初から侮ってなんかいないんだけど。  そうよ、アタシはヤクザのくだらない闘争も陣取り合戦も名誉も興味がない。ただ、アタシが欲しいのはこのビルがある敷地だけ。  ビルが欲しいわけじゃない。この住所の敷地、それが最も重要なの。 「言わない。そこまでわかってるんだったらなおさら、教えるわけにはいかないわ。あぁ、アタシの目的を知ってるのはアタシだけだから、他の子達に聞いても無駄よ。あんたは一生知らないまま――あ、ぐぅっ!!」 「テメェは忘れているだろうが、俺は睡眠を妨害されて機嫌が悪い。それに待つのは大嫌いだ。次はこっちいくぜぇ?」  アタシがすぐに口を割るようなオンナじゃないってわかってるわよね。すぐにまた腹を蹴って、さっき撃った足を今度は踏みつける。  どんなに見た目を女らしく着飾っても、仕草や口調を真似ても。アタシは工事も何もしてないから、口から飛び出す悲鳴は本来の声。 「テメェ、地声でもそんなに高ぇのか。無理に作らねぇでもその声、十分イイ声だな」  大嫌い。周りの同年代の男達は声変わりして、低くて格好良くなっていったのに。アタシはほとんど変わらない。  男とも女ともとれない、この中途半端な声。それにこの体だって綺麗なのはそれなりに努力してるから。でも元から中性的。
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