勝利の美酒に酔いしれるは孤独なケモノ

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 鼓動が早くなる。頭の痛みが激しくなる。ドクドクドクドク、ガンガンガンガン。体が打楽器になったみたいにうるさい。 「くそっ……誰なんだ、てめぇは!はぁ、はぁ、はぁ……っ」 「もうやめろ、ノル。これ以上やれば頭がおかしくなる。今日はここまでだ。君も。君がノルの知り合いだということは信じてあげるから、今は大人しく休んでいなさい」  いきなり目の前が真っ暗になった。それがアランが俺の目を手で覆ったんだと気付いた時には、俺はベッドから降ろされ彼に手を引かれながら小部屋を出ようとしていた。  静かなアランの声。焦りの混じった、優しく制する兄貴の声。  小部屋を出る前、最後に見えたリアは枕に顔をうずめ肩を震わせていたようだった。あいつもまた俺を静かに見ていた。  何なんだよ、アランもリアも。俺はせっかく、自分の力で失った記憶を取り戻そうとしていただけじゃねぇか。  なのにどうして邪魔をする?どうしてあんなにも、寂しそうな顔をする?俺とリアの関係は――?
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