巣屈にて

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 あーあ、行っちゃった。寒いんだけど。  素っ裸にコートだけって、風邪でも引かせたいのかしら?これ以上弱らせたくないって言ってたくせに。  ノルウェムはアタシに冷たくて攻撃的。アランは逆に温かくて優しい。アメとムチ?  DBの情報はあらかじめシャオリンが調べてくれていたから多少は知っていたけど。ノルウェムとアランが兄弟で、しかもアランの息子まで加わっているとはね。  でも、それよりもノルウェムの記憶喪失のことよ。アタシは本当に彼のことを知っている。  子供の頃の話よ。当時は彼がまさかヤクザだなんて欠片も思ってなかったし。アタシも普通の男の子だったんだし。  この場所でノルウェムを名乗る35歳の男なんて、アタシが知る“彼”以外の可能性は一桁。それがヤクザの、しかもトップに君臨しているなんて他人の空似であってほしかったわ。 「ノル…………あの頃のあなたはもういないのね。この場所に居続けるのも、そうだと思ったのに」  彼はアランがヤクザの仕事に行っている間に、アタシと会っていたから。アランはアタシのことを知らなくて当然。  7年前に何があったのか、シャオリンに調べてもらわなきゃ。知らなきゃ、ノルの“現在”を。  まったくもう、体中痛いし上手く動けないし。それに彼がアタシのことを全く覚えてないんだから拍子抜けしちゃって、なんだかやる気が半減。  ノルはアタシのことをどうするつもりなのかしら?最初に言っていたように尋問してアタシの目的を聞き出すのを諦めない?  打ち明けたところでもう、ノルにはわからないんでしょ。アタシにしかわからない、10年前の約束。
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