危ない熱情

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 今何時だと思ってんだよ。もう夜だ、明日は報復の殴り込みだ。ギオも探さないといけねぇし、リアと関係のある記憶も……  やることは山積み。俺の体が何人かに分身出来ればどれほど楽だろうかと、本気で考え始めたその時。  足音が止まった。靴が床を素早くこする音が聞こえて、つい聞き耳を立てる。 「っ……待っててあげるから、絶対にアタシを……ううん、アタシの中にいる“オレ”を探して!ノルならできるって信じてる。だから、最後まで諦めないで“オレ”を見つけ出して……っ」  ハッとして飛び起きると、2つの足音はバタバタと遠ざかっていった。  リアの中にいる……“オレ”?昔、リアがまだ完全な男だった時のことだからそんなことを言ったのか?  その叫び声は俺の心を大きく揺さぶり、頭に激痛が走る。ズキンッ!と1度だけなので一瞬呻いただけでもう平気だ。  だが、それでヒントのつもりか?リアが自分のことを“オレ”と呼んでいた時ってことしかわからねぇんじゃ小さすぎるヒントだな。  まるで恋する乙女か。勇気を出して告白をした、みたいなリア。俺は―― 「よし、シバきに行くか」  俺の部屋の前で仲良く正座して待っているらしい見張りをサボった2人を、どうやって痛めつけてやろうかと楽しみに部屋を出た。
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