帰宅、アタシの居場所

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 バイクは改造してあるのか、普通よりもかなり駆動音が小さかった。だから車に乗ってる時に気付かなかったんだわ。  何が何だかわからないけど、シャオリンはあの追っ手を撒くらしいからアタシは指示された場所に行かないと。  って、これってどこよ?まず、今いる場所がわからないんだけど。見たこともない山の中だし。赤い丸印がつけられているのは手書きで四角の上に十字架らしきものが書かれた、建物?  十字架で建物って教会か何かかしら?こんな山奥に教会があるとも思えないんだけど。 「とにかく、行くしかないわよね」  誰に向けるでもない、強いて言えば自分自身に向けられた言葉は木々のさざめきに吸い込まれていった。  自力で行けって、シャオリンの肩を借りてやっと歩けてたアタシなのに。体は男とはいえ、足を撃たれちゃってるのよ? 「んぐぐぐっ……いいわよ、真っ暗で何も見えないけど怖くないもんね!とにかく移動して、ひぃぃっ!!?」  今何時だと思ってんのよ?朝日が昇って明るくなるまではまだまだ時間がかかる頃よ。捕らわれてから何も食べてないからお腹すいたし。  この真っ暗な山の中で、しかもロクに歩けないアタシが1人でって有り得ないわ。クマでも出たらどうするのよ。  何とか立ち上がって方角もわからないまま歩き出した瞬間、近くでガサッガサガサッ!て音がしてつい跳び上がっちゃったわ。  杖代わりにしていた日本刀を構え、向ける。うっ、へっぴり腰かも。
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