初恋はメテオの彼方

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 昨日、すてきな夢を見た。優しくて、カッコいい男の子。ちょっとクセのある髪の毛も、くしゃっと笑うその仕草も、なにもかもが私の心を揺さぶった。ちょっとお茶目なところも可愛らしい。これがきっと一目惚れと言うのだろう。特になにかをしたわけでもないけれど、ただ喋っているだけで楽しかった。  朝、目が覚めて、がっかりしたのは言うまでもないけれど、その胸の高鳴りは、私が直前まで彼と一緒にいたことを、確かに証明していた。その日は一日中、彼のことで私の頭は一杯になっていた。今になって思い返すと、名前はおろか顔すらうろ覚えになっていた。夢の中の架空の人物なのはわかっているはずなのに、私の気持ちは鎮まることを知らなかった。一体どこの誰なのだろう。また会えたらいいのに。北風が顔に冷たい帰り道、私はそんなことを考えていた。  淡い期待を抱いたまま、私はいつもより少し早く布団に入った。肌を刺すような寒さの中、温かい毛布にくるまっていると、私は気がつく間もなく眠りについた。 「―聞こえるかい?」  聞き覚えのある優しい声。頭がその声の持ち主を判断する前に、喜びが体中を駆け巡った。 「ええ、聞こえるわ。まさか、今日も会えるなんて思ってなかった!」  私はまさか本当に会えるとは思っていなかったせいか、嬉しさと緊張で少し舞い上がっていた。 「昨日、君が明日も会いたいって言ったんじゃないか」  男の子は私が想像していたよりも、慣れた口調で話しかけてくる。 「あら、そうだったの?全然覚えていないわ。じゃあ、あなたは約束を守ってくれたってことね」  私は恥ずかしさを見せないようにそう言うと、彼も少し照れたようすだった。  楽しい時間はあっという間に過ぎた。しばらくすると男の子は「そろそろ行かなくちゃ」と立ち上がった。私はまだいろいろ話したかったが、わがままを言うのも悪い気がして、それでもまだ別れたくなくて、咄嗟にこう聞いた。 「明日も来てくれる?」 「もちろんさ。今度は今君が言ったこと、ちゃんと覚えていてくれよ」
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