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―あれは一体誰だろう。遠くの方でぼんやりと人影が見えた。歩くうちに徐々に人影は大きくなっていた。私と同じくらいの男の子。向こうもきっとこっちに気づいているだろう。向こう側はどうなっているのだろう。
その時、ひときわ大きな風が吹いた。
次に前が見えた時、男の子は消えていた。
少しして、私はまた歩き始める。
しばらく行くと、男の子は再び現れた。もう輪郭もはっきりと見える。どうやら寝転んでいて、花の陰に隠れてしまっていただけのようであった。
起き上がった男の子は再びこちらの方に歩き始めた。見覚えのあるようで知らない顔。男の子の顔はきょろきょろ動いていたが、なにを見ているのかはわからなかった。その目はすべてを貫通し、空中のその先を見つめていた。なぜだか私は、男の子の方を向くのは気まずいような気がして、二人はそのまますれ違った。
男の子が寝転んでいたと思われるへこみに、麦わら帽子が落ちていた。あの人の忘れ物かな―そう思いながらも、私は麦わら帽子を拾って頭に乗せた。
私は後ろを振り返った。
男の子はまださっきすれ違ったところにいた。私はもう一度麦わら帽子をぎゅっと被りなおして、彼の元へと走り出した。男の子は私を見るとにこりと笑って、手をあげた。
花びらが空へと舞い上がる。
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