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「あはは。まったくその通りだな。・・・それよりキッド。あの子たちと喧嘩でもしたのかな?」
「なんでさ?」
何気ないようすで訊ねる博士に、キッドは驚いて目を丸くした。
「だってあの子たちみんな、君と同じくらいの子だろう?それなのに一緒に遊んでいないなんて、なにかほかに理由でもあるのかね。・・・それに君はさっきから、その・・・少し羨ましそうにしている」
「そんなわけないよ。ただ・・・」
「仲間に入れて欲しいって言えないのかい?」
博士がそう言うとキッドは口を結んだまま頷いた。
「なにがそんなに恥ずかしいんだい?」
キッドはむすっとしたまま後ろで手を組んで黙り込んでしまった。もう話してくれないだろうと博士が諦めていると、キッドは俯きながらしゃべり始めた。
「だってぼくはチビだし、かけっこも遅いし、ボールを蹴るのも苦手なんだ」
「そんなのやってみないとわからないさ。それにあそこには君より小さな子もいるじゃないか」
博士は優しく説得してみたが、それでもキッドは一歩を踏み出すことができなかった。結局そうして躊躇っているうちに夕飯の時間がきて、子供たちはばらばらに解散してしまった。次の日もその次の日もキッドがその原っぱを駆け回ることはなかった。
そんなキッドを可哀想に思ってか、数日後、博士はあるプレゼントを用意してキッドの家へと向かっていた。博士が家に着くとキッドは退屈そうに庭でアリを眺めていた。
「こんにちは。これはまた随分と暇そうだね」
「ああ、博士。こんにちは。どうしたの、わざわざ家までやって来て」
話し相手ができてキッドは少し嬉しそうに首を傾げた。
「ちょっと今日は君に見せたいものがあってね」
「またおかしな発明でもしたんでしょ」
好奇心と警戒心が混ざったような口調でキッドは言う。
「まあまあ、そう言わずに見ておくれよ。きっと君も気に入ってくれると思うよ」
「そこまで言うなら見てあげてもいいけど」
キッドの口振りに笑いながら、博士は振り向いてそれを呼んだ。
「おーい。こっちに来るんだ」
そう呼ばれて木の陰から、男の子がひょっこりと顔を出した。それを見たキッドは驚いて声をあげた。
「ぼくだ!」
その男の子はキッドと瓜二つの顔をしていた。さらにその見た目だけでなく、身のこなしのどれを取ってもキッドにそっくりだった。
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