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ある日、キッドは朝食を済ませると、すぐに外へと出かけた。いつものように博士の家までレプリカを迎えに行くのだった。今日はなにをしようか。昨日の釣りの勝負の続きをしてもいいし、この前新しく見つけた道を散策するのもいい。今ではなにもかも自由だった。
期待に胸を膨らませて歩いていると、前の方で近所の子と話しているレプリカを見つけた。キッドは思わず立ち止まってしまった。二人は何度か会話をした後、近所の子は走ってその場を去っていった。キッドはそのようすをただじっと見ていた。
「やあ、キッド。こんなところで会うなんて。今ちょうど君のところに行こうとしていたんだ」
「ぼくもだよ。それよりさっきの子はどうしたんだい?」
キッドは遠慮がちに訊ねたが、レプリカは何食わぬ顔で言った。
「これからみんなと原っぱで遊ぶから一緒に来ないかって」
「ええ?どうして行かなかったんだい?」
キッドは驚いて少し声が大きくなった。せっかく誘ってもらったのに、なぜレプリカは断ったのか不思議だった。
「どうしてって、たぶん今日も君が来ると思ったし・・・それに、知らない子たちの中に入るのはなんだか嫌な気がして」
「そんな・・・せっかくのチャンスだったのに。君はなんて意気地がないんだ。もう誘ってくれなくなったらどうするんだい?」
悔しさのあまりキッドはつい汚い言葉を口にしてしまった。レプリカも怒ったような表情で言い返した。
「じゃあ、君だったらついて行ったって言うのか?」
そんなの行くに決まっているじゃないか。レプリカはなにが言いたいんだろう。ぼくそっくりと言えど所詮はロボット、頭の中までまったくそのまま同じにはなれないんだ。ぼくは君よりはもう少し度胸があるはずさ。きっとぼくなら行った。きっと・・・
「ああ、行くに決まっているじゃないか」
レプリカの丸くて大きな目は、同じように丸くて大きなキッドの瞳を捉えることができなかった。
その日は一日中どこかぎくしゃくしたまま二人は過ごした。しかし次の日になると、そんなことはなかったように二人の仲は元通りになっていた。
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