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ランバートはポカンと口を開けたまま、何が起こっているのかを聞くことにした。
ソファーに腰を下ろし、正面にファウストが座る。相変わらず世界中の不幸を背負っている。彼は何も言わず、一通の封筒をランバートの前に置いた。
差出人はアーサー・シュトライザーとある。現シュトライザー公爵であり、ファウストの父親からだ。失礼して中を改めると、彼のこの様子にも納得がいった。
内容は、ファウストのお見合いパーティーを行うから帰ってくるようにとのことだった。
「お見合いって…無茶ですよね」
「あぁ」
「退団、しませんよね?」
「その予定はない」
疲れ果てたのだろう声で言われる。普段より声が低い。これはかなり、精神的にきているんだろう。
騎士団は女人禁制。結婚が悪いというわけではなく、男所帯に女性を入れられないし、外の屋敷で生活されるといざというとき動けないからだ。
ただ、中には通い婚をしている人もいる。街に家庭を持ち、安息日だけを家族と過ごす。
だが原則籍は入れないから、愛人というか、内縁という事になりはするが。
「愛人囲うんですか?」
「俺にその甲斐性があると思うのか?」
「いえ」
迫力の増す黒い瞳に睨まれると、どうにも自分の失言を呪ってしまう。
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