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お見合い大作戦
八月の大祭も終わり、九月となった。
忙しさもピークを過ぎたある日、ランバートは何の前触れもなくファウストの部屋に呼ばれた。
部屋の主は生きた心地のしない顔をしていた。
表情が晴れないばかりか、背中には何を背負い込んだんだと言いたくなるほど肩を落とし、世界中の不幸を一身に受けたように影を纏い、そのくせ瞳だけはギラギラと射殺すように光っている。
何がどうしてこうなった?
思わず最近やらかした事を考えてしまう。
酒の勢いで修練場に出て、少し傷つけてしまった事だろうか。それとも、大浴場で騒いで、桶を一つ壊した事か。他には…少なくとも始末書を書くような事はしてないと思うけれど。
「あの……」
「ランバート、一生の頼みだ。俺を助けると思って協力してくれ」
「え? あの…」
この顔とこの雰囲気で頼まれる事って、なんだ? 誰か消すのか? 抹殺か??
嫌な予感しかしない。いや、しないだろう。だって目の前の人は今まさに誰か始末してきたかのような顔をしているのだ。
「あの…何を?」
「…俺の恋人として、シュトライザーの家についてきてくれ」
「……は?」
まったく話が分からない。何がどうしてそうなったのだ?
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