過保護な執事の甘い夜

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 忘れもしない、あれは五年前の初冬。  穏やかな朝日を浴びて眩しく輝く、純白の風景。道沿いに植えられた南天の実はいつの間にか赤々と色づき、雪帽子を被ってめかしこむ。そんな季節でございました。  ご縁があって、私は日本でも有数の資産家である京極家のお屋敷に、執事として仕えることになったのです。  ゆったりとした居住区に建つ富裕層の家々。その中でも京極邸は一線を画しておりました。  洋風のロートアイアンのような洗練されたディティールの門扉。見渡す庭園は手入れが行き届いており、四季折々に移り変わる景観が来客の心を和ませるのだろうと感心いたします。  玄関へと続く長いアプローチに敷かれた乱型の石英岩。その優しく温かな色合いに導かれた先に、京極邸が優雅に佇んでおりました。  白を基調としたヨーロピアン調の上品な外観。華美すぎず調和の取れた豪邸は、紳士でいらっしゃる主人(あるじ)の人柄そのもの。  今日よりこのお屋敷に住まう主人(あるじ)に忠誠を誓い、執事として申し分のない、いやそれ以上の働きをしなければ。  そのような決意を胸に視線を上げますと、アーチ型の窓のカーテンが揺れ、ちらりと人影が映った気がしたのです。
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