44人が本棚に入れています
本棚に追加
まるで夜空に浮かぶ星を宿したように輝く瞳。私ではない誰かを想って語っていらっしゃる姿を、これ以上見てはいられませんでした。
「申し訳ございませんが、そのご要望にお応えすることは出来かねます」
「立花・・・・・・? 」
「恋をした相手への贈り物は、お嬢様がお一人で作るべきです。その方を想って、一生懸命に作れば必ずお気持ちは伝わるでしょう。レシピに材料、必要なものは明日の朝一番に手配させて頂きますので、ご心配なきよう」
「でも、私」
「さあ。今日はもう、おやすみになってください」
ドアを開き、お嬢様の背中をそっと押しますと、落胆した悲しげな顔を俯かせて私の部屋を後にされました。
いつかこんな日が来るのは覚悟していたのです。
お嬢様にとって私は、ただの執事。さやかお嬢様のためならば、手となり足となる、ただの過保護な執事にすぎないのですから。
いつしか降り出していた雨のどこか物悲しい響きが耳につき、ベッドに横たわっても中々眠れずにいました。
浅い眠りに落ちては目が覚めて、を繰り返し、その度にお嬢様の笑顔を曇らせたことへの後悔と、胸の奥でもやもやと渦巻く濁った感情の正体に気がつき、我ながら驚いたものです。
最初のコメントを投稿しよう!