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「ない。やっぱりないぞ」
マコは表情一つ変えず。
「カバンの中にまだある」
やれやれ。あるわけないだろ…。俺はカバンの中に手を突っ込んでみた。あれ?なんだろうかこの膨らみは?更にカバンをごそごそと手でかき回すと、前に探した時には気付かなかったが、カバンの裏地の一部が小さく破れている事に気が付いた。俺は破れた裏地に指を突っ込んだ。布と布が重なってなかなか指が前に進まない。ん?指先に冷たい感触があった。何かに手が当たった!それを中指と人差し指で器用に掴み、ゆっくり引き抜いた。
!!!!
出てきたのは確かに、俺がなくした万年筆だった。実家に居た時に奮発して買ったものだ。誰にもなくした事は話していない。何故わかる。なんだか恐ろしい。手が震えてきた。
「どうして知ってるんだ!?」
マコは得意げな顔をしている。
「知ってるんじゃないよ。いやー。見えちゃうんだよ。フフフ」
マコと会うのは今日が初めてだ。マコが隠したという事もないだろう。可能性を隅々まで探ってみたが、本人が言う通り、過去が見えるという答えが一番しっくり来るような気がする。
「スゲー!信じる!詳しく聞かせてくれ!」
俺は掌をそれはそれは華麗にひっくり返した。
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