第一章 マコとの出会い

14/20
前へ
/153ページ
次へ
「ない。やっぱりないぞ」 マコは表情一つ変えず。 「カバンの中にまだある」 やれやれ。あるわけないだろ…。俺はカバンの中に手を突っ込んでみた。あれ?なんだろうかこの膨らみは?更にカバンをごそごそと手でかき回すと、前に探した時には気付かなかったが、カバンの裏地の一部が小さく破れている事に気が付いた。俺は破れた裏地に指を突っ込んだ。布と布が重なってなかなか指が前に進まない。ん?指先に冷たい感触があった。何かに手が当たった!それを中指と人差し指で器用に掴み、ゆっくり引き抜いた。  !!!!  出てきたのは確かに、俺がなくした万年筆だった。実家に居た時に奮発して買ったものだ。誰にもなくした事は話していない。何故わかる。なんだか恐ろしい。手が震えてきた。 「どうして知ってるんだ!?」 マコは得意げな顔をしている。 「知ってるんじゃないよ。いやー。見えちゃうんだよ。フフフ」 マコと会うのは今日が初めてだ。マコが隠したという事もないだろう。可能性を隅々まで探ってみたが、本人が言う通り、過去が見えるという答えが一番しっくり来るような気がする。 「スゲー!信じる!詳しく聞かせてくれ!」 俺は掌をそれはそれは華麗にひっくり返した。     
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加