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そんな寂しさを紛らわす為なのか、俺は女遊びに励んだ。適当な女を探し、そいつに食わしてもらったりもした。そんな女とも最近はご無沙汰で、生活は苦しかった。金も全くない状態で一人暮らしを始めたので借金もあり、食べることもままならない状態だ。2日に一回だけ食事するような状態が続いていた。当然足取りはフラフラおぼつかない。
俺はバイト先から一人暮らしの家に帰る為、そんなフラフラな状態で夜の繁華街を歩いていた。カバンが異常に重く感じる。夏なのに寒い。おかしい。特に鼻だ。触ってみると鼻は冬かと思うくらいに冷たくなっていた。呼吸が早くなり、頭のてっぺんが痺れて痛い。遂に足も上がらなくなり俺はその場にへたり込んでしまった。
俺の前を何人もの人が通り過ぎていった。本当にこの街の奴等は冷たい。視界が狭まっている。ああ…栄養失調ってやつなのかな…。などと考えていると突然声をかけられた。
「大丈夫ですか!?」
顔を上げると、そこには白いドレスを着た女がいた。相当な美人だ。メイクもしっかりしており、髪のセットも完璧。
ドレスからは胸がチラチラ見える。おとなしそうな声からは想像できないほど派手な見た目だった。
「ちょっとフラフラして…」
と返事をした。
「お酒じゃないですよね?救急車呼びましょうか?」
ありがたいが、それは困る。俺はこの時保険証を失効していた。保険料を払う金なんて勿論なかったのだ。俺は正直に言った。
「酒は呑んでいない。多分栄養失調だと思う。だけど、金がないから救急車は呼ばないで欲しい」
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