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そう言いながら女はタクシー代を払った。女の手を借りて俺はタクシーを降りた。気分はかなりマシになり、歩けるくらいにはなっていた。もっとも、フラフラなのは今もかわらないが、女も大丈夫だと思ったのだろう。俺を一人で歩かせた。初対面の男をタクシーに乗せた上に、その男を自宅に入れようとしている。本当に何かややこしい事に巻き込まれようとしてるんじゃないかと更に不安になる。しかし、ここまで来てしまった以上帰る金もなければ、家まで歩く元気もさすがにない。俺の選択肢は女の自宅で体力の回復を待つ以外に無いような気がする。
【女の自宅】
真下に来て見上げると本当にデカいマンションだ。マンションの床は大理石で出来ている。高級過ぎだ。女がオートロックを解除し、大理石の上をカツカツ歩きエレベーターに乗る。歩くのが遅い俺をエレベーターの中から女が手招きして呼ぶ。のそのそとゆっくり歩き、俺はやっとエレベーターに乗った。女はドアが閉まらないように押さえていた手をどけた。
ふと見るとエレベーターの最上階のランプが光っている。この女最上階に住んでるのかよ…。金持ち過ぎるだろ。ますます怪しい。
「さ!つきましたよ!」
俺は一瞬ビクッとした。いろいろ考えが巡っていた俺は女に言われ、ようやく最上階についた事に気が付いた。自宅の鍵をガチャガチャ開け、女が家に招き入れてくれた。俺も素直に部屋に入る。玄関に靴はあまりない。一人暮らしだろうか。廊下を歩くと、正面がリビングだった。
「そこに座っててください。ありあわせですけど、ご飯作りますから」
見るからに高級そうなフカフカのソファを女が指差す。
「いや、ちょっとそれはさすがに悪いよ!」
ぐぅ~…。タイミングよく腹が鳴る。
「こう見えて料理は出来る方だと思いますよ」
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