第一章 マコとの出会い

8/20
前へ
/153ページ
次へ
 うーん…キャバ嬢をしてるくらいだから、酔いつぶれて道端で寝てる奴を見るくらいは日常茶飯事だろう。まさか倒れている全員に声をかけて回っているのだろうか。いやいや、そんな事してたらキリがない。俺でさえ、酔い潰れている奴なんてごまんと見た。その全員に声をかけたとすると重労働過ぎる。もっとプラスに考えよう。俺の顔がタイプだったのだ。そうに違いない。顔がタイプなら助けるよな。うんうん!…いや、多分違うな。  俺の倒れ方が酔い潰れているのとは違って見えたのかな。現にマコは最初にお酒じゃないですよね?と訊いてきた。ここらへんが現実的。などと考えているとガチャッとドアが開いた。  長い髪の毛の水分をタオルで吸い取るようにして、部屋着に着替えたマコがリビングに入って来た。髪に非常に気を遣っているようだ。 俺のようにガシガシとタオルで横着に拭く感じではない。普段俺はガス代節約の為に水風呂に入っていた。うらやましい。俺も温かい風呂に入りたいなぁ。その後はフカフカのベッドで眠るのだ。ああ夢のようだ。 「ターカもお風呂入ってきたら?」 なんであなたはそんなに親切なんですか? 「入ります!入ります!スグにでも!」 今日の俺はすごくツイているような気がする。 「部屋着、用意しとくから入っといて」 マコの言葉の意味を俺はしばらく考えた。…泊まれって事なのか? 「そ、それは泊まって行きなさいと云うことでしょうか?」 何故か敬語になる。 「そうだよ」 マコが笑っている。俺は思った。飯が食えて、風呂に入れて、泊まれる上にヤれると。     
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加