せっぱつまった勇者の事情

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 まず結果から言おう。数分後、俺はすっきりした顔で、会談に臨んでいた。  どっしりと大きなテーブルの正面に、領主様が座っている。両側には、ずらりと並んだ貴族たち。  一癖も二癖もありそうな彼らを前に、国の未来すら左右するような重大案件を具申しなければならない。だが……。  俺はへらりと笑う。うん、謎のコタツに比べれば、なんだか全部うまくいくような気がしてきたよ。  だって道筋が見えている分、はるかにやりやすい。頭の中で準備していたものを披露するだけ。要は会社でやってたプレゼンだ。 「みなさま、北方でモンスターが大量発生しているのをご存じでしょうか――」  俺はぐるりと見渡し、貴族たちの視線を捉えつつ話し始めた。  言葉をなめらかに繰り出しながら、頭では全く別の事を考える。こんな事まで出来ちゃう勇者の頭脳、超ハイスペックです。はい。  今頃になって「異世界に、なぜコタツ!」というおかしさが込み上げてきた。  伝説の勇者が残したコタツの資料って、いったいどんなものだったんだろう。後で見せてもらえるか頼んでみよう。  執事が、部屋の隅でさらさらと筆記しているのが目に入る。  何か言葉を残す時には、十分に気を付けようと心に刻む。俺の言葉や駄文が後世にどんな影響を与えるのかと思うと、空恐ろしい。  コタツの真っ当な使用法も、どこかでタイミングを見計らって伝えるべきだとは思うが、今はまあいいか。
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