0人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「中佐、所定の配置完了しました。」
白い息を吐きながら、説明する兵士の様子から外の気温の低さが窺える。
“中佐”と呼ばれた男は、暖房が効きすぎて熱くなるくらいの室内で、コーヒーを静かに
啜った。この土地の厳しさはよくわかっている。夏は灼熱、冬は極寒の土地だ。
ロクな軍事行動も出来ない。だが、外で集められた部下達は死に物狂いで仕事をするだろう。
軍で死刑もしくは終身刑の囚人兵士達だ。今回の任務を終えれば減刑を約束されている
者もいる。勿論そんな事はないが…用済みの連中を有効利用するのは良い事だ。
「中佐殿、入りまっせ!」
囚人兵達を監視する部下の一人が入ってきた。彼等は通常の迷彩服ではなく、見た目を区別するため、黒を基調としたデザインで統一している。
「ご苦労…だが、その言葉遣いは何だ?仮にも上官に対する言葉遣いがなってないぞ。」
「ハッ、すんません。寒さが半端なくて!もう何もかもがどうでもよくなって!」
「何を言っている?貴様。様子が可笑しいな。パニックか?それに目元の傷はどうした?」
「ええ!そんな感じです!パニックも、パニック!!もうあかん感じでさぁ。」
ヘラヘラ笑っている男の右目の下に2本の切り傷…可笑しい?こんな部下は自分に
いたか?考える中佐に部下が言葉を続けていく。
「ところで中佐殿ぉ!皆が寒いお外、凍傷MAXで、そろそろ死人が出そうな勢いですが、
設置しているのは何かの発射台、恐らくミサイル!それも特殊な弾頭ときた。
あれは何です?」
不敵に笑うコイツは囚人兵だな。警備の制服を盗んだか?中佐は自身の座る椅子に
取り付けられたスイッチを静かに押す。間髪入れずに隣の部屋から飛び出した部下達が
あっという間に彼を取り押さえた。それでも不敵に笑う男を一瞥し、携帯端末を
操作しながら、言葉を発する。
最初のコメントを投稿しよう!