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 「ふん。無様に足掻いている。いったい何を思うのだろうな。所詮畜生だ。せめてその命、有効に使ってやる」  首を伸ばす。  あと少しで舌が肉に届く。  あと少しだ。  あと少しなのだ。  そうすれば、ご主人を守れるのだ。  ご子息を守れるのだ。  幸せに生き長らえさせてくれた、ご恩を返せるのだ。  ドシュ、と。  すぐ近くで音がした。  その瞬間、身体はふわりと軽くなり、あれだけ絶望的に感じていた食べ物との距離が、一気に縮まった。  これで。  これで、ご主人を。ご子息を。まもれるのだ。  そのまま、視界は暗転した。
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