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 腹が、空いた。  どれほど、食べていないだろう。  いや、一昨日は店の裏に捨てられていた肉を食べたな。一口食べた途端に、横から吹き飛ばされたけれど。その店はソイツの縄張りで、その縄張りを荒らす余所者を、ソイツは容赦の欠片もなく、吹き飛ばした。  そのせいで、足を痛めた。歩く時にびっこを引いているようになる。まったく、踏んだり蹴ったりだ。  昨日は落ちていた蝉を食べた。まだまだ、夏は暑いのに、蝉は早めに命を終えたようだった。カサカサの蝉を食べても、少しもおいしいとは思えず、のどが渇いただけだった。  フラフラと歩く。  このまま、死んでしまうのだろうか。  一昨々日は何を食べたかな。ああ、そうだ。自分の手をかじってみたんだ。これも肉なんだよな、と思ったら、口の中に涎が溢れた。ものは試しと噛みついてみたら、やっぱり痛くて、止めてしまった。  その前はどうだっけ。  確か、どこかで団子を食べたんだ。それを食べたら急に気持ちが悪くなったんだった。あまりにも気持ち悪くて、吐いたら、その団子もほとんど原型のまま、胃から逆流した。  多分、ネズミ用の毒団子だったんだろう。まともに物が食べれなくて、胃が弱ってたのが幸いした。消化されるのがゆっくりだったおかげで、異常に気づいてから吐き出しても間に合ったのだ。
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