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三日ほど経った。
体力がまだ戻りきらず、足元はなお覚束ないが、それでも体が危機的な状況を脱したことを感覚的に悟った。
男が皿に食べ物を入れて持ってきてくれる。
随分と柔らかく、べちゃべちゃとした物は、なんともかぐわしい香りがした。食らってみると思いのほか味がしない。しかし、そもそも犬というものは味覚がそこまで発達していない。味よりも匂いが食べ物にとっては何よりも大事な要素だ。そういった観点からすると、この食べ物には文句のつけようがなかった。
どれだけぶりになるかわからない、口からの食事。
その事実に、生きているという幸福を感じた。
小さな器をきれいに空にしてから顔をあげると、男が満足そうにこちらを見下ろしていた。
「よしよし。きれいに食べたな。申し分ない」
そう言って頭を撫でられる。
頭上に手が迫る感覚に、身体が恐怖を覚えるが、それを意識的に抑え込んだ。
この男は、小汚いこの身を抱え上げ、治療を施し、食べ物までくれた。
この感謝に対して、恐怖で返すというのはあまりにも無礼だろう。
意を決して、男の手を舐める。
親愛の証だ。
すると男は、少し面食らった顔をした後、破顔して頭を先ほどよりも乱暴にガシガシと撫でた。
「おうおう。頭がいいな、わんころ。いたいだけここにいてくれて構わんぞ」
その言葉がなぜか心地よく、この男を主人として仕えることにも不思議と違和感を覚えなかった。
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