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「帰り道さ、一緒なんだよね。だから一緒に帰ろ」
彼女は僕のカバンを持って教室を出た。
「待って!」
僕は彼女を追いかけて廊下に出た。すると彼女はくるくると踊りながら昇降口へ向かっていた。踊っているにも関わらず、やたら速い。
彼女は僕の下駄箱の前で立ち止まっていた。
「はい、一緒に帰ろ。どうせ山田くんも帰宅部でしょ?」
彼女はとても失礼な事をいいながらカバンを返してくれた。不思議と腹は立たない。
「えっと、名前は?」
「中村美雨。自己紹介聞いてなかったでしょ?」
中村さんはくりくりとした大きな目で覗き込む様に僕の顔を見た。
「う、うん……」
「ダメだよ、友達作りたいなら自分から興味を持たないと」
中村さんはそう言って自分の下駄箱から靴を取って先に外に出た。
「ねぇ、なんで僕と帰ろうと思ったの?」
追い付いて疑問をぶつける。
「昨日入学式終わったあと、山田くん先に帰ったでしょ?私もそうなんだけど。帰り道に君の背中見えたから帰り道一緒なんだなって」
中村さんの言うことは答えになっているようでなっていない。
「そうじゃなくてさ、帰り道一緒だから一緒に帰ろうってなる?普通……」
中村さんはキョトンとして僕を見つめる。
「普通じゃなかったらダメ?ひとりで帰るのなんか嫌だから同じ方向の君と帰りたかったんだけど。迷惑なら明日からひとりで帰るね」
そう言う中村さんはどこか寂しげに見えて僕は慌てて口を開いた。
「い、いや別に迷惑っていうんじゃないんだ!ただ、なんでかなーって思っただけで」
「じゃあ一緒に帰ってもいいの?」
「うん、もちろんだよ」
僕らはこうして入学式の翌日から毎日一緒に帰ることになった。
僕らの帰り道には用水路があってそこにはメダカが泳いでいる。
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