中村さんと僕と

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「誰だろ?ありがと、行ってくる」 「いってらっしゃい」 僕は母さんに見送られて家を出た。家から1歩出た途端灼熱地獄でうんざりする。 途中、コンビニでお茶を買いながら図書館に着いた。 中に入るとひんやりと心地のいい風が僕を優しく包んでくれる。シャツが汗でびっしょりの背中に張り付いた。 空いてるテーブルに座り、夏休みの宿題であるプリントを片付けていく。 5枚中3枚片付けて僕はプリントを仕舞い、伸びをした。 ふらりと立ち上がり、植物図鑑を持って席に戻る。なんとなくいいなと思った花を見つけてはスケッチしていく。 本来なら出歩いて見つけたものを描きたいけどこの暑さだ、そんな気力は起きない。 7種類程の花を描いたところで図鑑を閉じ、スケッチブックのページを捲る。 僕が新しいページに描き始めたのは植物でも風景でもなく、人物画。 中村さんを描き始めた。理由は彼女に会いたいと思ったから。この想いは別に下心とかそういうのではなく、ただ純粋に中村さんに会いたかったからだ。 ひとりの女の子としての彼女ではなく、友人として会いたかった。会っていつもの様に訳の分からない話を聞きたい。 僕は中村さんの絵を描きあげ、ふとある事を思い出した。 出かける前に母さんから受け取った封筒、あれは誰からなのか? 僕はさっそく封筒を開けた。中には1枚の便箋が入っていた。 [暑中見舞い申し上げます。学校始まったらまた一緒に帰ろ 中村美雨] 中村さんからの手紙だった。切手も貼らずに自分で届けるあたり、子供っぽくて中村さんらしいと思った。 やっぱり僕は中村さんにどうしても会いたくなって荷物をまとめて図書館を出た。
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