中村さんと僕と

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レジへ向かうと店員さん達はこちらをじっと見てレジに来るのを待っている。しかも1人はコロッケとメンチが入ってると思われる揚げ物袋持ってるし……。 中村さんはそんな事気にせずにレジに商品を置いた。 「山田くん、一緒に済ませちゃおうよ」 中村さんがそういうので一緒に置いた。 いちごみぞれは62円、サイダーは129円で1人分は191円だ。 暗算をして財布を開くとちょうど200円あった。 いや待てよ?たった200円だぞ?男の僕が奢るべきな気がしてきた。でもあとは1万円札が1枚あるだけなんだけどこれは崩したくないし……。うーん、僕はどうすれば……。 「山田くん?山田くんってば!」 「うぇ!?」 いきなり裾を引っ張られて変な声が出る。 「200円ないの?ないなら特別ご馳走するけど……」 それだけは避けたい。うん、お釣りを全額中村さんに渡そう。それがいい、そうしよう。 僕は財布から200円出してカウンターの上に置いた。先に中村さんが置いた200円の隣に見やすいように置いた。 「あの、コロッケ揚げたてありますが……」 「メンチも揚げたてです」 「?いえ、結構です」 中村さんは首を傾げながら断る。 「あの、メンチは?」 店員さんは僕を見て聞く。 「いえ、いいです。僕どちらかというとコロッケ派ですし」 中村さんといるからだろうか、余計な事まで言ってしまった。 「そうですか……。お釣りは18円になります」 店員さんは心底残念そうにお釣りを出した。 よし、今だ僕。 「お釣りは中村さん、いいよ」 「ん、そう?」 中村さんは素直にお釣りを受け取ってくれた。と思ったのも束の間で、お釣りはすべて募金箱に入れた。 「恵まれない子供たちに笑顔を」 中村さんは手をパンパンッ、と2回叩いて募金箱に向かって一礼した。それを見てポカンとする僕と店員さん達。 「さ、行こ」 中村さんはそんな事お構い無しに僕の手をグイグイ引っ張る。 「コロッケカップル……」 コンビニを出る直前にボソッと聞こえた。
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