中村さんと僕と

8/28
前へ
/52ページ
次へ
「まずはかき氷を半分食べまーす。おうちにいる時は食べずに大きめの深いお皿などに入れましょう!」 なんか始まった。 「今日はね、お皿なんて大層なものございませんのでこうして半分食べました。いいですか?よく見ててくださいね?」 中村さんはサイダーを開けるとかき氷に注ぎ始めた。 「これで完成でございまーす!その名も、その名も……えーっと……十人十色、皆様好きな名前をおつけなさいませ」 中村さんがそういうので僕はいちごサイダーと勝手に名付けた。 いちごサイダーを口に流し込む中村さん。 「ぷはぁ、真の夏の風物詩って正にこれ!」 中村さんは満足げに言う。 「山田くんもやってみなよ!」 「うん」 かき氷を半分ほど食べてサイダーを入れていちごサイダーにした。それを口に流し込む。 甘くて冷たくてシュワシュワする。確かにこれは真の夏の風物詩と言っても過言ではない、と思う。これはハマる。 「いいね、これ」 「でしょ?ところで山田くん。そのリュックサックには何が入ってるの?」 「宿題とスケッチブックだよ」 「スケッチブック?山田くん絵描いてるの?見たい見たーい!」 中村さんは僕の許可なしにリュックサックをガサゴソ漁る。その姿は毛糸をイタズラする子猫とどこか似ている気がした。 他の人にやられたら怒るんだろうけど中村さんなら別にいいや。 「へぇ、上手だね。あ、この花可愛い!ここ知ってる、学校だ」 中村さんは楽しそうにスケッチブックを捲る。 「ん?これって……私?」 覗き込むと今日図書館で描いた中村さんの絵だ。 「あぁ、それさっき図書館で描いてたんだよ」 「なんで私を?」 「会いたかったから。僕にとって初めての友達だったし」 「へへ、なんだか嬉しいな」 中村さんは照れたように笑う。 「よかったら貰ってくれる?」 自分でも予想外の言葉が口から出た。中村さんに喜んでもらえて浮かれているせいだろう。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加