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「まずはかき氷を半分食べまーす。おうちにいる時は食べずに大きめの深いお皿などに入れましょう!」
なんか始まった。
「今日はね、お皿なんて大層なものございませんのでこうして半分食べました。いいですか?よく見ててくださいね?」
中村さんはサイダーを開けるとかき氷に注ぎ始めた。
「これで完成でございまーす!その名も、その名も……えーっと……十人十色、皆様好きな名前をおつけなさいませ」
中村さんがそういうので僕はいちごサイダーと勝手に名付けた。
いちごサイダーを口に流し込む中村さん。
「ぷはぁ、真の夏の風物詩って正にこれ!」
中村さんは満足げに言う。
「山田くんもやってみなよ!」
「うん」
かき氷を半分ほど食べてサイダーを入れていちごサイダーにした。それを口に流し込む。
甘くて冷たくてシュワシュワする。確かにこれは真の夏の風物詩と言っても過言ではない、と思う。これはハマる。
「いいね、これ」
「でしょ?ところで山田くん。そのリュックサックには何が入ってるの?」
「宿題とスケッチブックだよ」
「スケッチブック?山田くん絵描いてるの?見たい見たーい!」
中村さんは僕の許可なしにリュックサックをガサゴソ漁る。その姿は毛糸をイタズラする子猫とどこか似ている気がした。
他の人にやられたら怒るんだろうけど中村さんなら別にいいや。
「へぇ、上手だね。あ、この花可愛い!ここ知ってる、学校だ」
中村さんは楽しそうにスケッチブックを捲る。
「ん?これって……私?」
覗き込むと今日図書館で描いた中村さんの絵だ。
「あぁ、それさっき図書館で描いてたんだよ」
「なんで私を?」
「会いたかったから。僕にとって初めての友達だったし」
「へへ、なんだか嬉しいな」
中村さんは照れたように笑う。
「よかったら貰ってくれる?」
自分でも予想外の言葉が口から出た。中村さんに喜んでもらえて浮かれているせいだろう。
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