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夏、仕事を終えた僕は自転車に乗って帰路を辿る。途中、郵便屋さんともすれ違う。
うちにも何か来てたりするのかと考えながら自転車を漕ぐ。
自宅に着くとポストに手を突っ込んだ。DMのはがきに紛れて1枚の往復はがきがあった。それらを持って家に入る。
「ただいま」
「おかえりなさーい!」
玄関で靴を脱いでると今年8歳になる息子の光輝が背中に飛びついてくる。
「おお、元気だな。宿題はちゃんとやったのか?」
「うん、3ページもやったよ!」
光輝は3本指を笑顔で見せながら言う。
「偉いなー」
頭をわしゃわしゃと撫でてやると、光輝は嬉しそうに目を細める。
「おかえりなさい、あなた」
半袖にエプロン姿の妻がカバンを取りに来た。
「あぁ、ただいま」
妻にカバンを預け、リビングに行くと往復はがきの宛名を見た。
どうやら僕宛てに来たもので、高校の同窓会の案内状だ。
懐かしくなって自室から卒業アルバムを持ってくると、麦茶をグラスに注いで風鈴がぶら下げてある縁側に座った。
卒業アルバムを開けば様々な思い出が蘇る。
僕は自分のクラスメイト一覧を見た。皆の写真が名前の順で並び、空白だった左上には僕が描いた絵が貼ってある。
「お父さん何見てるの?」
光輝は横から卒業アルバムを覗き込む。
「父さんが高校生だった時のアルバムだよ」
息子を膝の上に乗せて卒業アルバムを見せる。
「これはー?」
光輝が指差したのは僕が描いた絵。
「その人はね、中村美雨さんっていって父さんの友達だったんだ」
「へぇ、可愛いね。お父さんの初恋の人?」
光輝は好奇心に満ちた目で僕を見る。
「あれ?お父さん初恋はお母さんだって言ってたじゃない。あれは嘘だったの?」
妻は拗ねた様子で言った。
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