中村さんと僕と

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「あ、ねぇ寄り道していい?」 中村さんが思い出したように言う。 「いいよ」 「ありがとう」 中村さんはお礼を言うと丁度通りかかった角を曲がる。僕は目的地も聞かずについて行く。 数分後、着いたのはスーパー。 「何買うの?」 「青春」 中村さんの訳の分からなさも1学期と変わりなさそうだ。 中村さんは買い物かごを持つと、果物売り場に来てレモンをいくつか入れた。 他にはスティックシュガーを入れてレジへ行った。 僕は別のレジでお茶を2本買う。 買い物を終えた僕らは公園に来た。ベンチに座ると中村さんはカッターナイフを取り出し、レモンの皮を剥き始めた。 「な、なにしてるの?」 「レモンの皮剥いてるの」 「いやそうじゃなくて……」 「山田くんはレモンは皮ごといく派なの?」 予想外の質問に、言葉に詰まる。 「はい。砂糖はお好みで」 中村さんは半分ほど剥いたレモンを僕に渡すと、スティックシュガーの袋を開けて間に置いた。 「え?あぁ、うん……。そうだ、これどうぞ」 僕は先ほどスーパーで買ったお茶を1本、中村さんに渡した。 「ありがとう」 中村さんはお茶を受け取って自分の隣に置くと、自分のレモンも剥き始めた。 僕はどう食べていいのか分からないので中村さんが剥き終わるのを待った。 中村さんはレモンを剥き終わると、スティックシュガーを2本破って少しずつかけながら食べ始めた。見てるだけで口の中がきゅっとする。 「酸っぱくないの?」 「甘酸っぱい、青春の味。山田くん食べないの?」 「いや、食べるよ」 中村さんがやったようにスティックシュガーをレモンにかけると、思いっきり(かじ)り付いた。 口の中に酸味が広がり、噛めば砂糖がジャリっと甘い。 なるほど、確かに青春の味かもしれない。
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