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中村さんは棚の箱をひとつ取ると、僕の前に持ってきた。その中には色とりどりのお手玉が入っている。
「お手玉?なんでこんなものが……」
「ここね、色んなおもちゃがあるんだよ。ボランティア委員が小学校とか幼稚園に遊びに行く時に持っていくんじゃないかな?」
中村さんは目を輝かせながら言う。
「ね、遊ぼ!」
「うん」
僕は箱の中身を一通り見た。ビー玉やおはじき、メンコにべーゴマ、竹とんぼなど昔ながらのおもちゃもあれば、将棋やオセロなどのボードゲームもある。
僕達高校生は子供と大人の中間なんて言われるけど、僕はまだまだ子供らしい。
それらを見て心を弾ませた。
「ね、べーゴマやろ」
「うまく出来るかな?」
「何事も挑戦だよ」
「そうだね」
僕らは自分のイメージで糸をべーゴマに巻き付ける。
「出来た?」
きれいに糸を巻き付けた中村さんが言う。
「なんとかね」
「じゃあやるよー」
「ちっちのち!」
声を合わせて同時にべーゴマを回す。べーゴマはぶつかり合ってどちらも動きを止めた。
「うーん、難しい……」
べーゴマを見て唸る中村さん。
「ちょっとネットで調べてみようか」
「うーん、そうだね……」
僕はケータイでべーゴマの巻き方について調べた。
べーゴマの巻き方講座という動画があったので、ふたりでそれを見ながら巻いていく。
「できた!」
中村さんは巻き終えたべーゴマを高らかに掲げて言う。
「じゃあやってみよっか」
「うん!」
僕らは再びべーゴマを構える。
「いくよ……。ちっちのち!」
べーゴマは何度もぶつかり合い、僕のべーゴマが先に動きを止めた。
「やったやったー!勝ったー!」
嬉しそうに飛び跳ねる中村さん。僕はなんだか悔しくなった。
「中村さん、もう1回!もう1回やろ!」
「ふふふー、いいよ。また勝つから」
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