中村さんと僕と

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こうして再戦したけど僕は負けた。 「もう1回!」 「まだまだ!」 「次こそ!」 僕は意地になって何度も再戦した。だけど中村さんには一勝も出来ない。 気づいたら校内放送が流れ、帰らなければいけない時間になった。 「もうおしまいかー……」 中村さんは寂しそうに言う。 「そうだね……帰ろっか」 「うん、また遊ぼうね」 「うん、遊ぼう」 僕らは教室を出て急いで昇降口へ向かった。 扉は半分ほど閉まっている。 下駄箱から靴を引っ張り出して小走りで正門から出た。正門から出ると安心感がじわじわとこみ上げてきて、僕らは自然と歩調を緩めた。 お互いどんな昔の遊びを知ってるだとか、何が得意かだとか、こんな絵本を読んだことがあるなどを話しながら帰った。 「あ……」 中村さんと話すのがあまりにも楽しくて、家の前に着くと急に寂しくなった。 「また明日ね」 「うん、また明日」 そう言って手を振ると、少しだけ寂しさが緩んだ気がした。 それから僕らは毎日の様に遊戯室で遊んでから帰るというのを続けた。 僕は中村さんに1度もべーゴマで勝てないし、中村さんは僕に1度もオセロで勝てない。 お互いに勝負を持ちかける日もあれば、それぞれ好きな絵本を読んだり好きな遊びをしたりと自由に過ごす日もあった。 ただ、一緒に遊ぼうが別に遊ぼうが一緒に帰ることに変わりはなかった。 僕にとってそれがすごく嬉しかったりする。 11月の中旬、すっかり寒くなって日が落ちるのもだいぶはやい。 放課後になれば中村さんはいつもの様に僕の席に来る。けどこの日は少し違った。 「山田くん、しばらく後に遊戯室ね」 「え?しばらく後って……?」 中村さんは僕の疑問に答えずに走って教室を出た。廊下からは先生の怒鳴り声と中村さんの笑い声が聞こえる。 どれくらい待てばいいのか分からないけど僕はスケッチブックを開いた。絵を1枚描いたら行こうと思ったからだ。
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